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現場レポート5 東北縦貫線工事

1.はじめに

 『学会職員による現場レポート第5弾』、今回は、現在、JR東日本さんが建設中の東北縦貫線の建設現場を見学させていただきました。東北縦貫線建設プロジェクトは、東京駅と上野駅間に新しい線路を作り、現在、東京駅止まりとなっている東海道線と、上野駅止まりになっている東北・高崎線、常磐線を繋ぎ、直通運転するプロジェクトです。
ところで、『新しい線路はどこに作るの?』の疑問がわくと思います。なんと新しい線路は、現在の新幹線の上に作っていました!

 

 

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 工事区間と標準断面図(鹿島建設工事資料より)

 

 

 

 この線路ができると、これまでの東京駅や上野駅での乗り換えが不要となり移動時間が短縮(例えば、東北・高崎線の品川駅~大宮駅で約10分程度)できると共に、鉄道が繋がることにより人の行き来が増加し地域の活性化も期待できます。さらに山手線・京浜東北線の混雑緩和(平成18年度の混雑率213%に対し、目標値は、電車の中で折りたたんだ新聞を読める程度となる180%)が図れる画期的なプロジェクトです。

 

 

 

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(JR東日本提供)

 

 

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2.工事の手順

 工事は、現在の新幹線の直上に新しい線路を作るため、新幹線や在来線の終電が通り過ぎ、停電させた深夜に行われています。その手順は、既存の鋼製橋脚(橋の足にあたる、鉛直の部材)の上に橋脚を継ぎ足す工事から始まります。この工事は、夜間に新幹線の線路内に大型クレーンを入れ、鋼製の橋脚を継ぎ足します。その後、すべてを片付け何もなかったような状態に戻し、始発電車を通す。こんなことを毎晩繰り返しているとのことでした。

 

 

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工事手順図(鹿島建設工事資料より)

 

 

 

  次に、橋脚が完成するとその間には、プレキャスト部材(工場で作ったコンクリート製の橋の部品)を現場で組み合わせた橋桁(橋そのもの、水平の部材)を、桁架設機と呼ばれる緑色の大型機械で架設し新しい線路を作っています。この桁架設機は工事が終わると解体されてしまうとのことですが、総重量1800tの重さで非常に頑丈に作られており、高さは20m、長さは最も伸ばした場合で200mにもなります。実際、施工中であった平成23年3月の東日本大震災の際に大きな地震の揺れを受けましたが、被害はなかったとのことでした。安全に非常に気をつかいながら、工事を進めていることに驚きました。 

 

 

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桁架設機とPC桁(鹿島建設提供)

 

 

 工事は、現在、終盤にさしかかっており、平成26年度中の開業を目指しているそうです。

 

   

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3.取材の内容 

 現場見学に先立ち、JR東日本の横山副区長に工事の概要を説明して頂きました。そのあと、ヘルメットと作業着を着用し、いよいよ現場取材の開始です。
はじめに、神田駅から東京駅方面に移動しました。神田駅前の国道17号線との交差部では鋼製の橋桁が架設されています。この工事ではほとんどの橋桁がコンクリート製で計画されていますが、支間長が40m以上の場所では大きな部材強度が必要となるため橋桁が鋼製となっています。

 

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 神田駅前の道路交差部

 

 

 移動の途中で重層部の橋脚を見ることができました。下側の既設橋脚と塗装の色が違うため、今回の工事で継ぎ足された上側の新設橋脚がすぐに分かります。また、新設橋脚で横に張り出した部分にはコンクリート製の橋桁が架設されています。

 

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上側の色の違う部分が新しく継ぎ足した新設橋脚

 

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 施工中の東北縦貫線から東京駅方面を見ると、東京方アプローチ部は首都高都心環状線と交差しています。工事場所のわきでは、京浜東北線などが頻繁に通行しています。

 

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東京方アプローチ部

 

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 工場で製作したプレキャスト部材は東京方アプローチ部で地上から荷上げします。プレキャスト部材を吊り上げるための大型クレーンは大地震が発生しても転倒しない構造になっていて、東日本大震災の際も被害はありませんでした。

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地上から材料を吊り上げるための門型クレーン

  

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 神田駅付近から秋葉原駅方面を見ると、門型クレーンや桁架設機、橋桁が移動するための4列のレールが続いています。またここでは、重層部で防音壁を設置するためのトラス桁の組み立ても行われています。

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組立中の橋桁上からの眺めで左側に神田駅が見える

 

 

 秋葉原方アプローチ部へ移動すると、大型の桁架設機を見ることができました。全部で19本あるコンクリート製および鋼製の橋桁のうち、最後の桁架設の準備をしているところでした。この付近では線路のカーブがきついため、大型桁架設機械の方向調整がとても大変とのことです。

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緑色の大型桁架設機械は線路下からでもかなり目立つ

 

 

 秋葉原方アプローチ部から神田駅方面を見ると、重層部に変わる区間を見ることができます。新幹線が東北縦貫線の下にもぐり込むように走行しています。

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秋葉原方アプローチ部から重層部へ

 

4.取材の内容 

4.1  T職員

 このたびは、上野駅が終点のJR東北、高崎、常盤線の各路線が東京駅まで延伸して東海道線と直通でつながる「東北縦貫線事業」の工事現場を見学することができました。新幹線の高架橋を重層化させる難工事であり、通勤ラッシュ緩和や首都圏のネットワーク強化が期待されます。この現場は、約1年半前に広報委員会が地盤工学会職員に現場見学をしてもらおうという企画があったときに、候補地として挙がったところでした。
 3月4日(月)の午後、発注元のJR東日本、ならびに施工会社の鹿島建設の方に案内していただき、半日楽しく見学することができました。まず、工事事務所で工事概要の説明をしていただき、説明後に、以前からこの工事で不明な点があったので、いくつか質問をさせていただきました。

 

Q:秋葉原駅と東京駅間の新幹線高架橋部分のうち、神田駅を中心とした約600mにわたっての新幹線の上にさらに架設する「重層部」にすることは、平成3年6月の東北新幹線東京駅乗入れの段階から、予定していたのですか。
A:当初、新幹線と東北縦貫線を重層化して一括施工する計画でしたが、地元協議が難航したために一時断念し、設計的な配慮を行ったうえで東北新幹線のみを開業した経緯があります。それ以降、依然として高い混雑率の緩和に向けた対策と都市間ネットワーク強化の観点から、平成20年5月に東北縦貫線工事に着手しました。

 

Q:神田駅周辺は人通りも激しいところなので、施工する際の騒音等の環境対策はどうしていますか。
A:沿線住民に配慮して、一番苦労したのが騒音と振動です。在来線と新幹線の終電の後、作業できるのが始発までの3~4時間だけです。終電の後でも店舗が営業していたり、人の流れがあったりして、資材等の搬入には苦労しました。また、防音対策として透光板を採用した防音壁を重層部に設置し、景観にも配慮しています。

 

Q:期待される効果として、混雑緩和、乗り換え時間の短縮、首都圏を南北に結ぶ輸送ネットワークのさらなる強化が挙げられていますが、そのほか経済効果はどの程度見込まれていますか。
A:首都圏を南北に結ぶネットワークとして、山手線西側の「湘南新宿ライン」に対して、東側の東北縦貫線が沿線地域の活性化に大きく寄与すると考えています。

 

 現場事務所での説明のあと、実際に新幹線の真上を通る「重層部」に登りました。現場は、終電後から始発までの作業が中心で、一晩に約200名の作業員の方々ががんばっているそうです。
東京駅南側の拠点から東北新幹線の線路を使って鉄骨などの資材やクレーンを搬入し、新幹線の高架上に橋脚を組み立てたり、橋桁を架けるための専用機械を組み立てた仮設部材が並ぶ工事現場は、重厚でしっかりとしたところでした。
 平成20年5月に工事が着工され、平成26年度内の開業に向けて工事が進んでいるようです。順調に開業できることを祈念しております。

 最後に、今回の貴重な体験をさせていただき関係者の方々にお礼申し上げますとともに、特にJR東日本の横山副区長、池本様、ならびに鹿島建設の山本次長に大変お世話になりました。この場をお借りして感謝申し上げます。 

 

4.2  H職員

 工事現場は、神田駅周辺、東京駅と秋葉原駅の間の主要幹線が何本も走っている上部に高架をかけて新たな線路を通すという工事でした。この新線が開通することにより常磐線、高崎線、東海道線が相互乗り入れでき、上野-品川間で約10分の時間短縮になり、利便性が著しくアップするとのことでした。

 

 事前にあまり汚れる現場ではないとお聞きしていたのですが、形から入りたかった私は、作業着を用意していただきました。作業着に着替え、防寒着を纏い、ヘルメットをかぶり、長靴を履いて、いざ見学へ。安全帯という命綱の着用も体験させていただきました。やはり、このようにプロの方の格好を実際にしてみると、自然と身が引き締まる思いでした。東北新幹線の真上の建設現場まで、仮設の階段を昇ると、大きなクレーンやコンクリートのブロックなどの重機や資材がありました。こんなに至近距離で見るのは初めてでとても迫力がありました。すべて人が作ったものですが、こんなにも巨大なものを作ることができる人類の英知というものはすごいなと、改めて圧倒されました。日頃から、担当業務で色々な専門用語は見聞きしますが、実際どのようなところで使われているかということは全くわかっていませんでした。今回見学させていただき、コンクリート製のPC桁と鉄桁の違い(強度や重量等)など、色々とわかりやすく解説していただき、非常に勉強になりました。

 

 実際の作業は、新幹線の終電後、電気を切ってからしか行えないため、夜中の実質3時間の間に集中して行っているとのことでした。今回は昼間の見学でしたので実際の作業は見ることができませんでしたが、コンクリートの橋桁を一晩で確実に架けていくという作業がどれほど大変かということは、少しは理解できたように思います。毎晩、夜を徹して作業されている方々には本当に脱帽です。また、この工事にあたって周辺住民への説明を何度も行ったことなど、工事にまつわる様々なお話を伺い、なかなか一筋縄ではいかないものだということも理解できました。工事に関わっている皆様のご苦労は計り知れません。このような大きなプロジェクトでは、トラブルがあった場合、社会に与える影響が大きいため、仮設の部材ひとつとっても大きな地震や荷重に耐えられるものを使用していることなどをお聞きしました。このことからも、いかに重要なプロジェクトであるかということを実感しました。2年後の開業が今から待ち遠しいです。今回の見学で、東北縦貫線が非常に身近なものとなりました。完成した暁には、全国の鉄道ファンに混ざって始発の常磐線にでも乗車してみようと、今から心待ちにしております。

 今回、ご多忙の中現場を案内くださり、とても親切に説明していただきました、JR東日本の横山副区長、池本様、鹿島建設の山本次長をはじめ、すべての関係者に感謝申し上げます。最後に、工事に携わる皆様の安全と、東北縦貫線が無事完成することを祈念いたします。

                                            

5.おわりに 

  この工事は、「作業時間は夜間の実質3時間程度で、時間的制約が厳しい」、「新幹線の線路上で小さな落下物も許されない」、「工事設備は想定している地震に対して絶対に安全でなければならない」という特徴があり、常に細心の注意を払いながら作業が行われているそうです

 

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工事中の橋桁上で撮影

 

 

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 今回の現場見学は、神田駅と秋葉原駅の間を徒歩で往復し、しかも新幹線の上まで何度も登り降りしたので、日ごろの運動不足がたたり翌日は全身筋肉痛の見学でした。でもホントに見せてもらって感激の現場でした。 

 

 

(文責:㈱大林組 照井太一) 

 

 

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