年頭の挨拶 2019

chairman-35

第35代会長 大谷 順

”A happy new year and I hope all the JGS members will have a great success and happy life in this year.”

 新年,明けましておめでとうございます。会員の皆様におかれましては,すばらしい新年を
迎えられたことと存じます。今年は平成31年で亥年ですが,平成最後の年となります。
そういう意味では平成年間の集大成になると共に,新たな時代の幕開けともなります。
さて,早いもので私が会長になって半年以上が経過しました。就任の際,学会HP で
以下のような3 項目について約束させていただきました。

1) 地盤工学会の国際的プレゼンスを高める活動
2) 国土強靭化に資する技術開発と防災・減災技術の推進
3) 地盤工学会の社会的地位を確立すべく社会貢献

 1)については,昨年9 月に高知市において,国際地盤工学会(ISSMGE)のNg 会長と面談する
機会があり,意見交換をさせていただきました。その際,地盤工学会の近年の国際的活動と
して称賛を受けた中に,1980年代後半にわが国から始まり世界に波及したIS シリーズと
称された国際研究集会と,2015年福岡市で開催したアジア地域会議がありました。
私の就任挨拶において提案させていただきましたが,今後,是非IS シリーズを復活させる
ことで,各支部の若手会員の活性化と,地盤工学会の国際的プレゼンスを高める活動を
進めていきたいと思っており,すでに国際部長にその新たなシリーズの名前も含めた検討に
ついて依頼させていただきました。是非多くの会員の方が積極的にこの活動に参画いただく
よう,ご協力をお願いします。もう1 つ,国際的かつ学術的な活動として挙げられるのが,
Soils and Foundationsの運営です。2006年に英文専門誌化し,2009年には電子化を始めました。
現在は,Elsevier 社から発刊しており,編集委員のメンバーも約4 割は外国人研究者・技術者です。
その投稿数やインパクトファクター(IF)も飛躍的に増加し,国際学術誌としての地位を確立し
つつあります。現在,これをより進めるための議論をしており,完全オープンアクセス化に
向けての準備を進めています。

 続いて2)についてですが,昨年6 月に私が会長に就任後,地震や台風,また豪雨などの
多くの自然災害が発生しました。このうち,6 月に発生した大阪府北部地震,7 月に発生した
平成30年7 月豪雨,また9 月に発生した北海道胆振東部地震については,地盤工学会としての
調査団を派遣し,現在もその活動が進められています。平成30年7 月豪雨は全国規模での
豪雨災害でしたが,各地域において局所的な豪雨が広域に発生し,これまでに例をみない
大災害となりました。これについては地盤工学会として,会長特別委員会を発足させていただき,
各地域の災害情報の把握とその原因究明を行い,今後学会として豪雨災害を防ぐための提言を
公表することをお約束し,現在活動中です。近年「減災」ということばが広く使われるように
なりましたが,地盤工学会としてはやはり,「防災」についての施策も不可欠であると考えます。
地震については多くの国民が心配する南海トラフ地震を含め,その発生や規模についてはかなりの
不確定要素がありますが,全身全霊をもって防災対策に取り組む所存です。いうまでもありませんが,
今年こそ自然災害の少ない一年になることを祈念したいと思います。

 さて,最後の3)についてですが,地盤工学会は現在,「地盤品質判定士」の活動を積極的に支援しており,
私も地盤工学会会長として地盤品質判定士協議会の会長を務めさせていただいております。
ご存じの方も多いかと思いますが,昨年2 月には国土交通省により,「宅地防災分野」として
初めての登録資格認定を受けました。今後はこの資格について,広く社会に貢献できる体制づくりが
必須となります。地盤工学会の会員の特徴の一つとして,土木工学,建築学,農業土木,および
応用地質といった豊富な人材を擁することがあげられるでしょう。そういう意味では,正にこの
地盤品質判定士に適する人材に恵まれている学会ではないかと思っています。是非,より広い地域の
多くの会員の方にその役割を演じていただくよう,よろしくお願い申し上げます。

 改めてすこし学会活動を振り返ってみると,平成元年は1989年であり,地盤工学会の創立40年の年でした。
よって今年は創立70周年を迎えることになります。すでに7 月にさいたま市で開催予定の第54回
地盤工学研究発表会にて記念事業を行うべく準備を進めています。是非多くの会員の方に参加
いただくよう,重ねてお願い申し上げます。さて,40周年からの30年間ですが,初期は前にも
紹介した国際研究集会としてのIS シリーズの活発な活動が目に留まります。これにより,
国際地盤工学会議やアジア地域会議の開催を含め,地盤工学会の国際的プレゼンスが確立されたと
言えます。一方,後半になると,地震や台風に加えて,集中豪雨などの自然災害が多発しており,
学会としても原因究明や対策についての提言を積極的に行ってきました。今後も社会貢献を
積極的に行っていく所存です。最も大きな転換期は,やはり2010年の公益社団法人への移行では
ないかと思います。これにより,学会がより一層社会的立場を持ち,社会に還元する学会活動の
重要性が明らかとなりました。

 最後になりますが,これまでの平成年間のいろいろな活動の下,また新たな時代に向けて地盤工学会が
より一層発展するために,平成最後の会長として,学会の舵取りを行っていく所存です。
是非,多くの会員の方の学会活動への参加を改めてお願い申し上げます。また本年が会員の
皆様にとって実り多い年になるようお祈りし,会長としての新年の挨拶とさせていただきます。
本年もどうぞよろしくお願いします。