年頭の挨拶 2020

chairman-35
第35代会長 大谷 順

 

 

”A happy new year and I hope that all the JGS members will have a great success and happy life in this year.”

 新年,明けましておめでとうございます。今年は会長 任期の2 年目となります。昨年令和という新しい時代 を迎えましたが,5 月だったため,新元号で新年を迎えるのは初めてと思います。
会員の皆様におかれましては, 昨年同様すばらしい年を迎えられたことと存じます。

 最初に昨年を振り返ると,やはり災害の年であったと いう印象が一番です。その中でも,一昨年,平成30 7 月に西日本を中心に発災した豪雨災害について「会長特別委員会」を立上げましたが,昨年,その内容を中心に 豪雨災害に関する提言書をまとめました。また関係の方々に,内容について説明するということも約束させていただいておりましたが,国土交通省の大臣を始め,次官, また関連の局長を訪問して,今後の我が国の豪雨対策について直接口頭で説明させていただきました。ただそう しているうちに,ちょうどこの原稿を執筆していた10月には過去最高レベルと言える2019年台風19号が上陸し,今度は東日本を中心に広い地域において,平成30 7 月豪雨と同規模かそれ以上の水害が発生し,多くの方の命を奪う結果となりました。
 この時私はちょうど 東京に滞在しており,実際の台風を経験しましたが,改めて自然災害の恐ろしさを実感すると共に,被害を軽減するための地盤工学会の役割の大きさを痛感しました。 もちろん早速調査団の派遣をさせていただいております。
 また昨年は,地盤工学会創立70周年という節目の年 でもありました。詳細については地盤工学会誌1月号の総説にも書かせていただいているのでそちらをご一読いただければと思いますが,7 月にさいたま市での全国大会時に開催した記念式典に加えて,本部主催の特別企画を実行さ せていただき,また各支部においても多くの企画を立案・実行していただきました。各支部の方々に対し,この場を借りてお礼申し上げます。
 さて,本題の今年ですが,令和2年の学会についてすこしお話しをさせていただきます。建設業界は昨年までは比較的好景気であったと思います。それは今年開催される東京オリンピック関係の整備事業が多く実施されたことが大きな要因だったと言えます。
昨年もラグビーワールドカップが日本で開催されましたが,オリンピックはより大規模な大会であり,昨年以上に多くの外国人も来日し,その経済効果も大きいと言えます。そのような中,我が国としてはやはり自然災害への取り組みは避けて通れないのではないでしょうか。またご存じのように我が国は少子高齢化という大きな問題に直面しており, 18歳人口が減少する中,特に人材育成について多くの 方が懸念されていると思います。地盤工学会においても 減少していく若手会員についてどのように取り込むかと いうことは大変重要です。
これについては,学会としてもダイバーシティ委員会として会員の多様化について進めているところですが,より多様化した会員,すなわち 女性会員もそうですが,外国籍の会員も同様に重要とな ってきます。
これは例えば,大学としては留学生の確保と日本での就職の推進,また企業としても如何に人材の 多様化を図るかということになるかと思います。学会としても人材の流動化に広く対応していく所存です。また 会員の構成ですが,ご存じのように,会員の大多数は産業界の方々です。現執行部としては,この会員の大多数を占める企業の方々によりメリットを感じていただくよ うな活動を推進することをすでに決定しています。
 続いて学会運営についてです。ご存じの方も多いと思いますが,現在地盤工学会においては,財政の健全化と今日のグローバル社会に対応する目的において,以下の 2 つの施策について決定しております。
1) 地盤工学会誌の完全電子化, 2) SoilsandFoundations のフルオープンアクセス化 これらは,かなりのチャレンジだと言えますが,学会誌が完全電子化することで,経費の節減はもちろんです が,記事の完全カラー化,また英語での記事も掲載しやすくし,各企業の工法紹介なども世界的に情報発信を行うことが可能となり,法人会員のメリットについても, 電子化した学会誌に優先的に情報発信ができるようにす るなどの方策も取れると考えています。また後者ですが, 今日のジャーナルの国際競争に勝つためには,論文の質はもちろんですが,より早く掲載及び公開することで引 用度数を上げることも大変重要です。これはいわゆるインパクトファクターだけの問題ではありません。またこうした状況は,これまでの購読料という形式から,著者が広く読んで引用してもらうために掲載料を払う方式に 代わるものです。すなわち採択された著者が掲載料を払うことになります。これについては,昨年5年間の科学研究費の採択を受けており,若手への支援はしっかりさせていただきます。
 最後になりますが,地盤工学会は現在公益社団法人として,地盤工学に関わる技術の推進はもちろんですが, 加えて社会的貢献を目指して活動を進めています。そのためにはいわゆるスクラップアンドビルドは不可欠となります。加えてわが国特有の縦割り社会にメスを入れ, 他学会との連携を深めると共に,各省庁に対しても多角 的に対応できるようにすることが重要だと思っています。 新たな時代に向けてより一層発展するために,令和時代 の最初の会長として残り半年間の舵取りを進めていきたいと思っています。是非多くの会員のご支援を改めてお願い申し上げる次第です。また本年が会員の皆様にとっ て実り多い年になるようお祈りし,会長としての新年の挨拶とさせていただきます。本年もどうぞよろしくお願 いします。