年頭の挨拶 2017

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第34代会長 村上 章

 新年明けましてあめでとうございます。2017年の新年を迎え,謹んでご挨拶申し上げます。

 昨年6 月の第58回通常総会より会長職務にあたっております。
昨年も平成28年熊本地震,平成28年8月北海道豪雨が発生し,斜面崩壊・がけ崩れなどの土砂災害や河川堤防の被害に見舞われ,人,家屋,公共施設等々に甚大な被害をもたらしました。亡くなられた方へ深い哀悼の意を表しますとともに,被災者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。災害連絡会議では災害調査団を編成して,地盤災害を調査するとともに報告会を実施しました。

 こうした災害に対し「地盤品質判定士」への積極的支援により,各地で発生する地盤工学的諸問題の解決に向けた活動を進めることにしています。具体的には,学会として地方公共団体と個別に災害に関する協定締結を進めており,すでに多くの地域で締結を実現しています。熊本地震についても「地盤品質判定士」を積極的に活用いただく目的で,昨年7月21日付で熊本県知事に対し学会より要望書を提出しました。

 国際活動に目を向けますと,Soils and Foundationsのインパクトファクターが一年間の留保を経て復活し,1.238とそれまでの2倍以上の値となりました。これによりSoils and Foundations は国際情報発信の有力なツールであるばかりか,競争力を有する国際ジャーナルへ進化しました。インパクトファクターは他の有力な国際ジャーナルに追いつき追い越そうとしており,地盤工学会の発信する研究成果が世界的に注目されている証左であると言えます。

 一方,東畑郁生前会長には,2009~2013年に国際地盤工学会(International Society for Soil Mechanics and Geotechnical Engineering; ISSMGE)のボードメンバーを,2013年からはアジア地域副会長を務められていましたが,本年9月に行われる次期会長選挙に立候補されるべく,地盤工学会として支援することになりました。

 地盤工学会は,国際地盤工学会のメンバーソサエティーの中で米国,英国に次いで3番目の会員数(約1,150名)を擁しており,32の技術委員会(Technical Committee)のうち6つで委員長あるいはセクレタリを務めるなど,国際地盤工学会における重要なポジションを占めています。また,Soils and Foundations の刊行や多数の国際会議・国際シンポジウムの開催などにより学術上・実務上の発展に関わる貢献を行ってきました。このような状況から,国際地盤工学会の運営に主導的に関わることもが学会に求められてきた一つの重要な使命です。これまで2名の会長(故福岡正巳先生と石原研而先生)を始め,ほぼ毎期ごとにボードメンバーあるいは副会長を輩出しました。東畑前会長は,ボードメンバー(2009~2013年)としてはISSMGE Bulletin の発刊・編集に多大な貢献をされ,また副会長(2013~2017年)としてはLow Cost Conference の実施による学術・技術の普及に取り組まれてきました。一方,国際地盤工学会長はここ4期にわたり,ヨーロッパ・北米だけから選出されており,アジア地域からの会長が世界的にも期待されるこの時機に,東畑前会長は会長職に最も近い位置におられると思います。

 東畑国際学会長が実現すれば,学会にとって名誉であるばかりでなく,日本の学術や技術の高さを国際的に知らしめるチャンネルが増えることにつながります。我が国の地盤技術者やその所属機関にとって海外ビジネスの遂行にあたってプラスの効果も期待できると考えられます。

 会長選は昨年末に公示され,ISSMGE を始め各メンバーソサエティに東畑前会長を正式にノミネートする旨の文書を会長名で送りしました。この文書は学会英文Web site トップページにありますので,会員の皆様が外国の研究者と交流される際は,是非東畑前会長への投票を呼びかけていただければ幸甚と存じます。

 副会長当時,「メディア懇談会」を企画し,定期的に報道機関へさまざまな情報を提供しました。しばらく途絶えておりましたが,今般「地盤工学会メディア懇談会―地盤工学会と報道機関の情報交換会―」という名称で復活し,地盤工学に関する注目度の高い情報を発信するとともに学会と報道関係者の皆様との意見交換を実施しています。昨年3回にわたり提供した話題は,1)熊本地震のこれまでの調査結果と梅雨・台風時期の豪雨への対応,2)地盤品質判定士を活用した被災者支援の体制,3)杭問題に関する地盤工学会からの提言,4)液状化・造成宅地被害等への対応状況と地盤工学会の取り組み,5)福島第一原子力発電所廃止措置に向けた地盤工学的新技術と人材育成に関する検討委員会(略称:廃炉地盤工学委員会)の活動状況,です。最近はメディアで取り上げられる機会も増えております。

 最後に,2009年に取りまとめられた中長期ビジョンについて,それ以後見直されていませんでした。

そこで今年度のうちに検証を行い,それを踏まえて来年度に中期計画・中期目標を定め,その後長期ビジョンの検討に入ることを予定しています。

 会員の皆様のご多幸とご活躍を祈念して,新年のご挨拶といたします。

丁酉歳首