平成30年度地盤工学会賞受賞者が、平成31年3月15日の理事会において決定いたしました。なお、学会賞は6月7日の第61回通常総会で授与いたします。
※以下は受賞業績名をクリックすると業績内容が表示されます※
◆平成30年度学会賞受賞者一覧PDF版はこちら◆(PDF 257KB)
(注:受賞者の所属は応募当時,掲載は応募順)
賞の名称 | 受賞業績名 | 受賞者 |
地盤環境賞 | 土砂災害により発生した災害廃棄物の適正処理と高リサイクル率の達成(PDF 779KB) | (株)鴻池組 |
●授賞理由:大規模災害時に発生する大量の土砂混じり混合廃棄物の処理においては,土地造成やリサイクル材料としての有効活用を図りつつ,廃棄物として最終処分する分量を減らすことが重要である。本業績は,大規模不法投棄や東日本大震災での実績をもとに,平成26年 広島豪雨災害における災害廃棄物処理に際して非常に高いリサイクル率を達成するとともに,分別した土砂を土木資材として有効活用するなど,社会的貢献が高い。また,得られた知見は今後の災害復旧・環境保全に留まらず,市街地や埋め立て地盤における再開発工事など,社会資本更新時に発生する混合廃棄物への対応策としても応用性が高い。以上より,本業績は地盤環境賞にふさわしいと認められた。 | ||
技術業績賞 (技術) |
重要幹線道路直下における大断面非開削工法の適用(東京外環自動車道 市川中工事) (PDF 617KB) | 東日本高速道路(株) 鹿島・大林・鉄建特定建設工事共同企業体 |
●授賞理由:本業績は,東京外環自動車道千葉県区間に属するものであり,幅30m,高さ17m程度のRCボックスカルバート構造からなる延長約1.5kmの掘割式道路トンネルを建設するものである。基本形式として,高速道路を地下,国道を地上に建設され,地下水位が高い地盤条件のもと,道路トンネルを河川や幹線道路,鉄道と交差させる難易度の高い工事である。本業績では,幹線道路との交差部にアンダーピニング工法を採用し,遮水性や耐震性を確保させながら,高剛性パイプルーフ工法を適用し,既存構造物への影響を最小限に抑えている。以上より,本業績は,今後のアンダーピニング工法の発展に大きく寄与するものであり,技術業績賞にふさわしいと認められた。 | ||
技術業績賞 (事業) |
三河港神野地区岸壁(-12m)耐震強化岸壁における全国初の「疑似重力式」構造の採用(PDF 1,713KB) | 国土交通省中部地方整備局三河港湾事務所 国土交通省中部地方整備局名古屋港湾空港技術調査事務所 (株)ニュージェック |
●授賞理由:本業績は,三河港神野地区岸壁耐震強化岸壁の施工に際し,既設護岸の鋼矢板を利用しながら,その背面に新設鋼矢板を打設し,さらに,その背面を高圧噴射攪拌工法や深層混合処理工法による固化改良体を造成することによって,「疑似重力式」による耐震強化岸壁を,我が国で初めて整備したものである。同構造形式は,これまでにない構造形式でありながら,既往の設計手法を組合せての安定性照査が可能であり,コスト縮減,環境負荷削減効果等の優れた特徴を備えている。以上より,本業績は,今後の港湾施設の整備・発展に大きく寄与し,社会的貢献度が高いことから技術業績賞にふさわしいと認められた。 | ||
技術開発賞 | 吹付け工法による締固め土構築システム(PDF 765KB) | 小林 一三(鹿島建設(株)) 笹倉 剛(鹿島建設(株)) 上本 勝広(鹿島建設(株)) 石井 健嗣(鹿島建設(株)) 中嶌 誠門(鹿島建設(株)) 中島 悠介(鹿島建設(株)) 米丸 佳克(鹿島建設(株)) |
●授賞理由:本業績は,狭隘な箇所でも一定の施工速度で5Ec相当の締固め土を構築可能な方法として,事前に含水比調整した地盤材料を超高速で吹付けて締固め土を構築する方法を開発したものである。工法の開発に加えて,品質管理上重要となる吹付け材料の含水比調整方法として,粒度分布の変化を抑えるための凍結混合工法を独自に開発するとともに,現場密度を簡便かつ迅速に計測する方法を開発するなど,土木施工の省力化,生産性向上を見据えた独創性が認められる。粘土質材料の狭隘部での高品質な締固めという観点から適用範囲は広く,高い応用性が期待できる。以上より,技術開発賞としてふさわしいと認められた。 |
||
技術奨励賞 | 3Dレーザースキャナとプロジェクションマッピング技術を組み合わせた掘削管理システムの開発(PDF 669KB) | 青野 泰久(清水建設(株)) |
●授賞理由:本業績は,3Dレーザースキャナとプロジェクションマッピング技術を組み合わせて,山岳トンネル底部の掘削具合を可視化するインバート掘削管理システムを開発したものである。二つの技術の特長を巧みに利用して,3Dレーザースキャナによる切羽形状の計測結果とトンネル設計データを比較し,プロジェクションマッピングにより掘削に必要な深さを色別に実物面に直接映し出すというアイディアを初めて実現した点に独創性の高さが認められる。現在の対象はトンネルインバートの掘削であるが,切羽掘削や開削トンネル底盤掘削,コンクリートのはつりや床面仕上げなど,出来形管理の観点から応用範囲は広いと期待される.以上より,技術奨励賞としてふさわしいと認められた。 |
【研究・論文賞部門】
賞の名称 | 受賞業績名 | 受賞者 |
研究業績賞 |
セメント改良技術の調査・設計・施工・品質管理に関する研究 (PDF 980KB) | 北詰 昌樹(東京工業大学) |
●授賞理由:本業績は,セメント改良地盤の変形・破壊挙動と品質管理に関して長年の研究を積み重ね,地盤改良技術の向上,設計法の改良,健全な技術の普及に大きく貢献した貴重な成果である。改良地盤の変形・破壊挙動に関する研究の中で行われた先駆的かつ独創的な数々の遠心力載荷実験の成果は,後の各方面の関連研究に多大な影響を与えている。また,品質管理に関する研究では,ウェットグラブサンプリングの適用性と室内配合試験における供試体の作製方法が強度に及ぼす影響を明らかにした。品質管理に関する一連の国際共同研究を通じて,規格の統一化など技術の国際的な普及に貢献している。これら一連の研究業績はセメント改良技術の調査・設計・施工・施工管理を総合的に発展させたものとして高く評価される。以上より,研究業績賞としてふさわしいと認められた。 | ||
研究業績賞 |
格子状地盤改良を併用したパイルド・ラフト基礎の常時および地震時挙動 (PDF 1,143KB) | 山下 清((株)竹中工務店技術研究所) |
●授賞理由:本業績は,格子状地盤改良を併用したパイルド・ラフト基礎について,長期にわたる入念な動態観測と数値解析によって,常時および地震時に対する安全性を検証した研究であり,地震が頻発する我が国の軟弱地盤地帯での構造物建設に際して,優位な知見を与えるものである。比較的大きな地震動のもとでの地盤・基礎・構造物系の観測記録は世界的に見ても極めて少なく,学術的にも大変貴重な成果である。また,実測結果から評価・検証した細密な動的3次元解析を通して,計測では解明できなかった地震時の挙動およびメカニズムを検討している。結果として,格子状地盤改良+パイルド・ラフト基礎という地盤力学的には極めて複雑なメカニズムを有する構造について現象の解明に寄与し,構造物基礎に関わる技術の進展に大きく貢献している。以上より,研究業績賞としてふさわしいと認められた。 | ||
論文賞 (和文部門) | 原位置と室内試験によるVsを用いた液状化強度比の推定法 (PDF 610KB) | 清田 隆(東京大学生産技術研究所) 呉 杰祐((株)オリエンタルコンサルタンツグローバル) |
●授賞理由:本論文は,原位置探査で得られたせん断弾性波速度Vsと原位置試料の室内試験結果から,「年代効果」を呈する原位置での液状化強度比RLの推定法を提案している。三軸液状化試験に関する既往研究を整理し,液状化強度に及ぼす影響は密度と土粒子構造に集約できることを示し,密度一定条件下で土粒子構造を変化させる試験を多数実施し,地盤のVSとRLに対し,原位置密度の再構成試料で得られるせん断波速度VS*と液状化強度比RL*とから,それぞれの比の関係(VS/VS*~RL/RL*関係)が地盤種別によらず一意に決まることを見出した。本推定法により,従来手法では過小・過大に評価されてきた地盤の液状化強度比を精度よく評価でき,実用的貢献度も高い。以上より,論文賞(和文部門)としてふさわしいと認められた。 |
||
論文賞 (和文部門) | 泥水式シールド一体型の自然由来砒素汚染土壌浄化技術の実証と性能評価(PDF 787KB) | 設樂 和彦(清水建設(株)) 毛利 光男(清水建設(株)) 石鍋 誠一(清水建設(株)) 江口 嵩 (清水建設(株)) 山本 千絵(清水建設(株)) 田中 仁志(清水建設(株)) |
●授賞理由:本論文は,新しく開発した泥水式シールド一体型の自然由来の砒素汚染土の浄化技術の実証実験を説明するとともにその効果を確認したものである。実証実験を行った浄化技術は,迅速な浄化処理が可能で,浄化土は砒素溶出量基準に適合し,濃縮汚染土が約10%に減容化されるとともに,建設資源として利用可能な浄化土を約90%回収できることを示した。近年,掘削土が自然由来の砒素に汚染されている事例が数多く報告されており,計画・施工段階で,大きな問題となっている。本技術は,汚染土を浄化処理するとともに,汚泥として処分する量を大幅に減容化して処理土を資源としての再利用を可能にするという,きわめて高い実用度を有するものである。以上より論文賞(和文部門)としてふさわしいと認められた。 | ||
論文賞 (英文部門) | Experimental and DEM assessment of the stress-dependency of surface roughness effects on shear modulus (PDF 1,031KB) | 大坪 正英(東京大学生産技術研究所) Catherine O’Sullivan(インペリアル・カレッジ・ロンドン) |
●授賞理由:本論文は,地盤の初期せん断剛性の拘束圧依存性挙動について,実験及び個別要素法による数値解析を用いて粒子の表面粗度の影響について調べており,特に,剛性が拘束圧の平方根の関数として表現される経験則の機構に着目したものである。光学干渉計を用いた表面粗度の定量化,三軸試験による弾性波伝播実験の高度化,表面粗度を考慮した接触理論を実装したDEMによる弾性波伝播解析手法の確立など,実験と解析において独創的な工夫がされている。これらの結果に基づき,トライボロジーの知見を活用することで粒状材料としての土の物性メカニズム解明に大いに寄与している点が高く評価できる。以上より,論文賞(英文部門)としてふさわしいと認められた。 | ||
論文賞 (英文部門) | Velocity-based time-discontinuous Galerkin space-time finite element method for elastodynamics (PDF 635KB) | Vikas Sharma(京都大学) 藤澤 和謙(京都大学) 村上 章(京都大学) |
●授賞理由:本論文は,構造物の動的応答をより高精度かつ安定的に解析できる手法として,空間と時間の両方向の離散化に有限要素離散化を適用するSpace-Time有限要素法を提案している。様々な地震波形に対する地盤,土構造物の地震応答解析では,計算特性と安定性の積分パラメータ依存性が課題になっているが,本論文では,時間方向に有限要素を用いることで生じる未知数の増加についても最低限に抑える工夫がなされており,課題解決に大きく貢献する論文である。また,いくつかの例題を通して当該解析手法の妥当性・優位性も十分示されており,論文としての完成度も高く,他分野への応用も期待できる。以上より,論文賞(英文部門)としてふさわしいと認められた。 | ||
研究奨励賞 | Laboratory testing procedure to assess post-liquefaction deformation potential (土の液状化による被害ポテンシャルが評価可能な室内試験手法の提案) (PDF 1,378KB) |
金 鍾官(韓国建設技術研究院) |
●授賞理由:本論文は,土の耐液状化性能を評価するために複数の供試体に対する試験が必要であったのに対して,一つの供試体に応力振幅一定繰返し載荷などの一連のサイクルを実施することより,耐液状化性能の評価が可能となる試験方法を提案している。提案法から求めた繰返しせん断特性とその後の残留変形特性は,液状化被害予測のための数値解析に使う構成則パラメータ設定時に必要な材料特性を与えており,本論文の実務における有用性は高い。さらに,複数の供試体を用いれば土試料自身の持つ不均質性の評価に通じる発展性も認められ,土質動力学分野の材料評価の発展に寄与する成果として期待される。以上より,研究奨励賞としてふさわしいと認められた。 | ||
研究奨励賞 | Analytical investigation of disturbance on seabed-sampled soil specimens and its influence on unconfined strength (PDF 875KB) | 杉山 友理((国研)海上・港湾・航空技術研究所-港湾空港技術研究所) |
●授賞理由:本論文は,海洋海底地盤内の溶存ガスの存在が,採取試料の力学挙動および室内試験で得られる非排水せん断強度に及ぼす影響について,独自の構成モデルによる土・水・気体連成有限要素解析を用いた,サンプリング過程のシミュレーションにより検討したものである。海洋海底地盤の安定性評価技術は,レアメタルやメタンハイドレートなど海底資源の開発の要であり,わが国にとって大きな役割を果たすことが期待される。減圧に伴う溶存ガスの気化が採取試料の力学性状に及ぼす影響について,本論文の詳細な定量的評価の試みは過去に例を見ないものであり,その先駆性と発展性は極めて高い。以上より,研究奨励賞としてふさわしいと認められた。 | ||
研究奨励賞 | Laboratory study and interpretation of mechanical behavior of frozen clay through state concept (PDF 1,289KB) | 王 金元(School of Water Resources and Hydropower Engineering, Wuhan University) |
●授賞理由:本論文は,地盤凍結工法や寒冷地地盤工学に関わる凍土力学の分野において,凍土中の土骨格の状態履歴を明確にする試験装置を開発し,粘土試料に対して種々の温度・ひずみ速度条件下で試験を実施して,その結果を限界状態概念に基づき解釈したものである。同一の試料に対して凍結・非凍結状態下で包括的な試験を行った研究は稀有であり,従来は全応力のみで解釈されてきた凍土の力学を,凍土と非凍結土の力学の連続性という新しい切り口から捉え直し,今後のモデル化の方向性を提言しており,その先駆性と発展性は極めて高い。以上より,研究奨励賞としてふさわしいと認められた。 |