極端降雨・巨大地震に対応した斜面防災対策研究委員会

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委員会趣旨

近年の土砂災害は、自然斜面だけでなく、人手が加わった人工斜面(盛土、切土)で起こることが多くなっている。熱海市において、渓流に残置された“盛り土”が崩落して土石流化し、下流域で多数の死者・行方不明者が出た。また、神奈川県逗子市においては、マンション敷地斜面が崩落し、歩行者が死亡した。これらの斜面災害は身近なところで発生したので、社会に大きな問題を提起した。これより、大雨の頻度が増すにつれて、安全性がより求められる人工斜面において、大きな災害に至らずとも、変状や小崩壊が多発するようになってきたと言える。
盛土についてみると、2023年5月に「宅地造成及び特定盛土等規制法」が施行され、国土強靭化として促進されている大規模既存盛土の安全性調査が実施されている。盛土は、宅地盛土から道路・鉄道、河川堤防の盛土まで広く対象になり、管理者・所有者によってアプローチは異なり、関与の限界がある。また、大規模盛土造成地においては、降雨浸透時に加えて、地震時の安定性評価が重要であり、コストと時間がかかる。
また、切土についてみると、切土掘削後40~50年を経過した道路のり面において、のり面工・斜面安定工の劣化が進み、崩壊・地すべりに至る事例が出始めている。また、山間部を通過する道路・鉄道では、土石流や落石・倒木による災害リスクが高まっている。これらは地山の状態変化(地質リスクの顕在化)が影響していると考えられる。
 一方、これら人工斜面に対するメンテンナンスは、橋梁やトンネルのそれに比べ、広がっていない。劣化した吹付けコンクリートの剥落、のり面排水孔の目詰まりなどが全国的に起こっており、この先ますます増えるものと予想される。
今後、線状降水帯による極端降雨、南海トラフ地震等の大地震の発生による土砂災害の激甚化が危惧される。これより、安全性が追求される人工斜面に対して、技術上の課題を抽出・整理し、次の研究開発のベクトルを定め、斜面防災の機運を醸成する必要があると考える。しかしながら、技術力が自然外力に追いつかないだけでなく、技術者の不足も露呈してきている。そこで、斜面災害リスクの軽減を目的として立ち上げる新設委員会「極端降雨・巨大地震に対応した斜面防災対策研究委員会」において、主要な課題として次の事項に取り組む。

・ 人工斜面(盛土工、切土工)の劣化と崩壊、安定性評価、対策
    ※ 劣化には地質別の地山の風化変質、盛土内部の侵食による脆弱化などが考えられ、それらの解明が必要である。
・ 人工斜面(盛土工、切土工)のメンテナンス(点検、補修、長寿命化)と機能強化(耐災性の向上) 
    ※ 機能強化には気候変動を見越したロングスパンでの事前防災の検討が重要であると考える。
・ 斜面防災のための地盤調査・試験の改善
    ※ 宅地盛土内での地盤調査は振動・騒音・通行等の点で制約条件や配慮事項が多く、関係住民の理解を得ることは容易ではない。自然斜面のみならず人工斜面においても様々な条件下で工夫して調査を実施することが技術の基本である。その観点で実施された地盤調査・試験事例からノウハウを収集・整理し、会員に技術関連情報として発信する。
・ 斜面防災に資する技術者・研究者人材の育成と確保
   ※ 共通の経験知・ノウハウは組織(企業、学校等)を横断して伝承しておく必要がある。
・ 斜面防災技術の国際化
   ※ 諸外国でも斜面災害リスクが増大しており、日本の防災技術力を提供する機会が増えると思われる。研究成果を国際化しておくことは重要である。

委員名簿

2024年7月更新

No. 会 務 氏 名 所 属
1 委員長 鈴木 素之 山口大学
2 委員 北爪 貴史 パシフィックコンサルタンツ(株)
3 委員 若井 明彦 群馬大学
4 委員 稲垣 秀輝 株式会社環境地質
5 委員 伊藤 和也 東京都市大学
6 委員 石丸 太一 東京理科大学
7 委員 下野 宗彦 西日本高速道路エンジニアリング中国株式会社
8 委員 川波 敏博 西日本高速道路エンジニアリング中国株式会社
9 委員 十川 尚廣 パシフィックコンサルタンツ株式会社
10 委員 土田 孝 土田地盤工学研究所
11 委員 鏡原 聖史 大日本ダイヤコンサルタント株式会社
12 委員 田島 智子 株式会社エイト日本技術開発
13 委員 笠間 清伸 九州大学
14 委員 太田 史朗 川崎地質株式会社
15 委員 小西 純一 サンコーコンサルタント株式会社
16 委員 石川 達也 北海道大学
17 委員 古谷 元 富山県立大学
18 委員 髙宮 晃一 復建調査設計株式会社
19 委員 小松 晃二 株式会社ケーティービー
20 委員 山口 充 株式会社鴻池組
21 委員 佐々木 直也 八千代エンジニヤリング株式会社
22 委員 金田 一広 千葉工業大学
23 委員 藤田 安秀 アジア航測株式会社
24 委員 加村 晃良 東北大学
25 委員 海野 寿康 宇都宮大学
26 委員 大石 正行 大起理化工業株式会社
27 委員 落合 達也 アジア航測株式会社
28 委員 吉川 修一 八千代エンジニヤリング株式会社
29 委員 大野 博之 株式会社地質工学社
30 委員 河内 義文 株式会社ケイズラブ
31 委員 松木 宏彰 復建調査設計(株)
32 委員 渡邉 諭 鉄道総合技術研究所
33 委員 森田 晃司 株式会社 大林組
34 委員 片山 直樹 株式会社日本海技術コンサルタンツ
35 委員 利藤 房男 応用地質(株)
36 委員 佐竹 亮一郎 東急建設株式会社
37 委員 長谷川 陽一 国土防災技術株式会社
38 委員 上野 将司 応用地質株式会社
39 委員 千葉 伸一 応用地質株式会社
40 委員 村上 豊和 西日本高速道路㈱
41 委員 加茂 由紀彦 八千代エンジニヤリング株式会社
42 委員 笹井 友司 中電技術コンサルタント株式会社
43 委員 小野 舞 応用地質株式会社
44 委員 神谷 知佳 基礎地盤コンサルタンツ株式会社
45 委員 木村 太一 ライト工業株式会社
46 委員 藤井 公博 ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社
47 委員 高橋 良輔 大日本ダイヤコンサルタント株式会社
48 委員 原 弘典 中央開発株式会社
49 委員 杉山 健太 ライト工業(株) 
50 委員 酒井 崇之 名古屋大学大学院
51 委員 酒井 直樹 国立研究開発法人 防災科学技術研究所
52 委員 久田 裕史 株式会社高速道路総合技術研究所