会長挨拶2024

会長就任のご挨拶

2024年6月

第38代会長 渦岡 良介 京都大学
第38代会長 渦岡 良介
    京都大学

本年65日の総会において第38代会長を拝命し,古関潤一前会長の後を引き継いで20266月までの2年間,その職責を務めることになりました。ご支援いただいた皆様に改めまして感謝申し上げます。これまでの諸先輩方が築かれた地盤工学会の歴史を考えますと身の引き締まる想いですが,地盤工学会が掲げている3つの目的(学術技術の進歩への貢献,技術者の資質向上,社会への貢献)に対して貢献できるよう,微力ながら全力を尽くす所存です。

学会は会員のニーズ,情報提供者のメリット,行事を主催する楽しさをマッチングさせることで成り立っている面があります。これまで在籍した支部では若手からシニア技術者の皆様が献身的に支部活動を支えておられました。会員の皆様が様々な形で学会活動に楽しんで参加頂ける学会にできればと思います。具体的には以下のような活動に重点的に取り組みます。

1) 地盤のデジタルツインを目指した学術・技術の振興

地盤工学分野においても機械学習などを用いたデータ駆動型研究が盛んになっていますが,その進展のためには地盤材料の実験や現場の観測で得られたデータの蓄積とオープン化が必要です。各支部で整備されてきた地盤情報データベース,「災害調査データの収集と活用委員会」などの災害データベースや過去の災害報告書のデータに加えて,現場観測データもオープン化できれば,データ駆動型研究の進展,将来的には地盤のデジタルツインの実現につながります。この基礎となる地盤情報の蓄積とオープン化を推進します。

2) 技術者継続教育と教育を通じた社会貢献

本部・支部を問わず学会が主催する様々な講習会は貴重な資源です。コロナ禍で定着したハイブリッド講習会のメリットを生かし,これらの資源を最大限活用します。例えば,若手技術者の地盤工学リスキリングや高校教員の地理・地学教育支援,ジュニア世代や一般への防災教育など,技術者継続教育や教育を通じた社会貢献に取り組み,長期的な視点で地盤技術者の育成を目指します。この一環として,「ぼうさいこくたい2024」(10月19,20日)では防災学術連携体を通じて「土地を知り,土砂災害に備える」というオンラインセッションを開催予定です。

3) Soils and Foundations(S&F)を核とした国際情報発信

S&Fは2020年1月にフルオープンアクセスに移行し,国際情報発信に努めてきました。さらなる国際情報発信強化のため,新たな取組としてS&Fの掲載論文の様々な地盤データのオープン化を推進します。また,学会全体としても1)で述べた通り地盤データのオープン化を促進して,アジアの拠点として国際地盤工学会における世界の地盤データの蓄積に貢献します。

加えて,古関潤一前会長による「中長期ビジョン2023検討委員会」(小髙猛司委員長・名城大学)では,地盤工学会を取り巻く諸状況を整理し,今後学会が取り組むべき活動方針を示しております。今後,HPを通じて会員の皆様のご意見を伺った上で内容を決定し,具体的な活動計画に反映いたします。

北田奈緒子副会長,渡部要一副会長,野田利弘副会長をはじめとする総勢21名の理事会,6つの部,9つの支部,および学会事務局のご協力のもとで,以上の活動に取り組んでまいりますので,会員の皆様のお力添えをお願い申し上げます。