H23年度 第14回 事業企画賞表彰

◆第14回 事業企画賞表彰◆

平成23年度事業企画賞表彰者が、平成24年3月16日の理事会において決定し、平成24年6月13日の第54回通常総会で授与しました。

表彰業績名 表彰対象者

学会ホームページを用いた東北地方太 平洋沖地震に関連した広報活動          

総務部 広報委員会  代表者 田中耕一(委員長)、 奥野哲夫(元委員長)

●授賞理由:

 広報委員会では、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震後、直ちに学会HPに『東北地方太平洋沖地震 災害情報・支援情報』のページを開設した。このHPでは、被災した会員へ生活支援情報を提供すると共に、プロフェッショナル・ボランティアの募集と派遣、募金活動への協賛を呼びかけ、被災者支援に貢献した。また、学会調査団の調査結果は、速報性に留意しほぼ毎日の更新頻度でHPに公開し、会員に対して迅速に震災に関する最新情報を提供し続けた。
英文HPも全面的に改訂し、海外の地盤技術者に対しても、タイムリーな情報提供を行える環境を整備し、国際的な広報活動にも貢献した。
さらに、震災を契機に、一般の方々からの学会HPへのアクセスも増加した。広報委員会では、防災に関連した講習会を開催すると共に、地盤に関する一般の方からの疑問に真摯に対応した。
本事業は、地盤工学会会員のみならず、一般の方々に対しても有効で迅速かつ正確な情報を提供することが出来、公益社団法人の活動としての社会的貢献度は多大であると評価する。
以上の選出理由により、事業企画に対する表彰候補として推薦するものである。

地盤技術に関する解析技術(個別要素 法)講習会

事業部
地盤技術に関する解析技術(個別要素法)講習会講師および企画者
 前田健一、中田幸男、松島亘志、森口周二、渡邉康司

●授賞理由:

 本講習会は、社団法人(現公益社団法人)土木学会応用力学委員会離散体の力学小委員会との共催で実施したものである。他学会における研究成果を広く有効に活用する新しい企画であり、数値解析という専門性の高い技術を、地盤材料への適用を実務での応用例を含めてわかりやすく解説するとともに、実際にDEMプログラムを使用した演算実習を体験できる内容である。
テキストについても、今までの委員会成果から大変充実したものを提供することによって、受講者の会費を低減することができた。
講習会への参加人数も多く、アンケート結果からも会員の高い関心が得られたことから技術の普及への貢献度が高かったことがわかる。
今後のより公益的な学会活動において、このような要素技術を幅広い分野ならびに視点で活用する機会を設けることは大変意義のあることであり、学会の社会貢献領域の拡大とともに会員の多様化を促進するものと期待されるものである。
以上の選出理由により、事業企画に対する表彰候補として推薦するものである。

「実務家のための火山灰質土~特徴と設計・施工、被災事例~」の刊行及び講習会

北海道支部
北海道の火山灰質土の性質と利用に関する研究委員会
 代表者 三浦清一(委員長)
佐藤厚子(幹事)、八木一善(幹事)、
伊藤陽司、小野寺康浩、川端伸一郎、小海尚文、
斉藤和夫、左近利秋、谷藤義弘、冨澤幸一、中田隆
文、水野津与志、松本和正、山内 智(以上 委員)
風間基樹(オブザーバー)

●授賞理由:

 地盤工学会北海道支部の産官学の有識者からなる「北海道の火山灰質土の性質と利用に関する研究委員会」が平成20~22年度の3年間にわたる研究により、「実務家のための火山灰質土~特徴と設計・施工、被災事例~」を取り纏め、刊行した。
火山国である日本には、第四紀以降の活発な火山活動により火山噴出物が広域に堆積している。したがって、火山灰質土は日本の代表的な地盤構成土の一つである。しかしながら、火山灰質土に適切と思われる設計法および施工管理法が未だ確立されておらず、一般の砂質土や粘性土の設計がそのまま適用されている場合が多いことから、現場でのトラブルの大きな要因となっている。このような背景から、本書はこれまでに不明瞭であった火山灰質土の性質や力学挙動のメカニズムを詳細に研究し、北海道の火山灰質土をベースに実務家が求める工学的技術情報を集約したものである。特に、近年問題となっている地震・豪雨・凍上などの被災事例の詳細を示しているのが特徴であり,時宜を得ている。
本書は、これまでの火山灰質土に関する既往の書籍や研究会資料の成果を踏襲し、特に実務家が必要とする設計・施工・維持管理、さらに災害対応のための技術書として実用性が非常に高いものである。また、本書解説の講習会を地方も含めて3回開催し総計400名もの参加者を得ており、実務に携わる技術者に火山灰質土を扱う際の要点を広く啓蒙している。この点から、本書は地盤工学の発展に寄与することのみならず、実際に火山灰質土を扱う実務家のガイドラインとして有用であり,学術・技術的,社会的貢献度が非常に大きい事業であると評価される。
以上の選出理由により、事業企画に対する表彰候補として推薦するものである。

籍「関東の地盤」出版

関東支部
関東地域における地盤情報データベースの運用と活用検討委員会
 代表者 龍岡文夫(委員長)

●授賞理由:

 関東支部から発刊した書籍関東の地盤(関東の地盤(2010年度版)地盤情報データベース付)は、関東地質の地質的特徴、関東地域8都県(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨)の地形、地質特性と自然災害との関わりについて、本格的に整理するとともに、地盤モデル構築した一部地域の研究成果をはじめて本格的に取りまとめた書籍である。また、約4万本の関東地方のボーリングデータを都県、公益法人から提供を受けて、約4万件の土質試験データとともにデータベースを構成してDVDに収め、付録としたもので、2期6年の研究委員会活動を結実させたものである。       本書籍に掲載されている地盤情報は、関東地域8都県の地形・地質情報の理解を深めるだけでなく、具体的に地盤情報データをもとに地質層序の推定から、地盤モデル構築まで、実務から研究への活用が可能である。この書籍の初版は,2010年11月に地盤工学会および丸善から300冊が発刊され、2011年3月初旬には大好評のもとに完売した。その後、未曽有の災害となった東日本大震災後の防災復興に役立てるために、会長の提言に従って、関東地域の100の自治体組織に本書籍を寄贈するために、第2版300冊を増刷し、学会の公益活動に貢献した。また、この書籍は、本来地盤を専門とする技術者や研究者を購買層に設定したものであるが、東日本大震災以降、一般市民が地盤情報を理解する資料として活用されはじめている。
以上のように、本書籍は、関東地域の地盤情報を新たに取りまとめただけでなく、広く一般に広める公益活動的側面を持ち、また学会事業への貢献度も高いと評価される。
以上の選出理由により、事業企画に対する表彰候補として推薦するものである。